「第91回ファジィ科学シンポジウム」: 平成14年 9月21日(土)
行列積の交換可能性と量子確率論について
Toeplitz 行列の正規性のための必要十分条件および
モーメント問題におけるopen problem
講演者
概要:ファジィ理論がコルモゴロフ確率論とは違うやりかたで論理的なあいまいさを
扱うことを量子確率論の場合を例に挙げ注意すること、派生する2つの数学の問題に
ついてお話しする。
1. ファジィ概念の出現を考えると、入力の場合と出力の場合に分けられる。入力の場合:データにはあいまいさが含まれている。これに統計的な処理を加える(平均をとったりヒストグラムに集計するような)と情報を失ってしまう危険性があるので、まるごとファジィなもの(かさねあわせ)として表現する。データベース検索でもオブジェクトの属性を不完全なままにして行うほうが絞りきってしまうより良く行える場合があることは経験的に知られている。出力の場合:制御問題で、ディジタルに閾値を決めるよりファジィなやり方で制御値を決めたほうが柔構造でスムーズな制御が行える。意思決定においても決断を先送りにして成り行きを見ながらあいまいなままロジックを進めていくことがよく行われている。入力、出力という言い方をしたが、ここで述べたいことは、時間の経過とともに運動がある場合、決定論的な動き(ニュートン力学に従った、つまり原因結果が決定論的に定まる)に対し状況推移の把握があいまいなままの運動いわば量子力学的、因果関係が確定的でない場合の論理をファジィ論理でも適用する必要があることを注意しておきたい。不確定性原理によりもたらせられた予測の不完全性と因果律の欠如。これは、確率論でいう確率空間、統計学でいう母集団といった概念を許さない、宇宙を部分でしか認識できない根源的なものといえる。観測を行ったことが因果関係に関係する。観測も物理法則に従う。たとえば、試験を行う(=観測)とき客観的に学生の能力を見ることができるかというと試験問題を解くことにより学生は勉強したことになり能力が高まる。観測は母集団に無関係でなく結果的に変化させることになる。(極端にいえば、母集団というものはない)こうなると観測の順序が決定的になり、確率変数A、確率変数BがあるときABとBAは異なる。非可換率論=自由確率論=量子確率論というものが最近研究されている。これらについては文献[1][2][3]
2. コルモゴロフ確率論では不規則な揺らぎは古典物理学に従う揺らぎである。運動が予測不可能になったとき、観測者の知識の不足から確率現象がもたらされる。量子力学の確率は観測者の知識の不足から来るのでなく、たとえ観測者が物理的力学過程をすべて知っていたとしても、その物理量を得ようとすると物理量の状態が予測不能な変化を起こす。
観測が物理現象の一部として干渉を起こすのである。ファジィにも共通しないか?「整数」⇒「実数」⇒「複素数」⇒「ベクトル」⇒行列⇒「作用素」という人間が発見してきたプロセスの最後のところに位置する「作用素」が量子力学における数概念であると思う。普通の数、行列、微分作用素、積分作用素。運動量もそれが満たす微分方程式から微分作用素を取り出し代数的なしくみを抽出する。
3. ザデーがfuzzyを考察したいきさつは[4]を見よ。1950−60年ごろThinking Machine、多値論理を実際的な問題に適用すること。ある意味人工知能のさきがけ。量子論理とファジィ論理がある。 今、統計の場合、システム(モデル)=母集団=公理系の設定の失敗からくるエラーとサンプリングからくるエラーをなし崩し的に混ぜて分析しているのではないか。ファジィや量子力学ではそもそも前提となる母集団を確定していないぼんやりしたもの(正確には状態の重ねあわせ)であり観察から時間的推移の因果関係が逆転したりあるいはベイジアン的に「結論から原因推測」=「母集団類推」したりしなければない。また、量子状態の重ね合わせを積極的に用いて並列処理をおこなうのが量子コンピュータである。
しからば、ファジィコンピュータとは?
4.数学のはなし
4−1.行列積の交換可能性
(1)量子力学であつかう作用素は自己共役作用素である。
, ![]()
において
は純虚数でなければならないまた
は行列ではありえない。
(2)エルミート行列積の交換可能性について[5]
、
が
をみたすとき、
があり
、
となる多項式
が存在する。
(3)Halmos の定理.[6]
2つの Toeplitz 作用素 が交換可能であるための必要十分条件は作用そを定義づける関数(シンボルと呼ばれる)が analytic, か co-analytic, か一方が他方1次式のばあいである。
(4)Halmos の定理の系[6] 正規 Toeplitz 作用素は Hermitianに限る。
(5)Toeplitz 行列が正規行列であるための必要十分条件[7]
Ikramov(1994) は実数体上の normal Toeplitz 行列 は 4タイプ: symmetric, skew-
symmetric ( up to the principal diagonal), circulant , or skew-circulant のいずれかであり、複素数体上では2タイプ(Type T,Type U)のいずれかである ( Ikramov et.al(1996))ことを示した。要するに、Halmos の作用素の場合はType IしかなくTypeIIが出てこない。この点で、有限次元の行列の場合と違っており、ほかにも作用素で言えていることが有限次元の行列でも言えるかが問題となる。
そこでたとえば以下のような問題が考えられる:(たぶんいくつかは自明であろうが)
HyperNomal:![]()
quaiNormal:![]()
Toeplitz作用素では HyperNormal
quasiNormal
Normal
Toeplitz行列でも同じことが成立するか?
compact 作用素では HyperNormal
とNormalは同じことが知られている。
実際
であるから、
のトレースはゼロ。HyperNormalなら
は正定符号であるから、対角線が非負でその和がゼロより、
はゼロ。
つまり、Normal正規行列である。しかし、quasiNormalはどうか?
4−2 モーメント問題
非可換確率論においては、確率空間をボレル集合族から定義するのではなく
C*代数とかvonNeumann環を用いて定義し、分布というものはエルミート作用素
と汎関数(状態と呼ぶ)
を用いて
、![]()
とするいわゆるk−次モーメントを与える、測度
により定義される。
、![]()
より
を求める問題は古来Hamburger moment problemと呼ばれている。
をすべてのモーメントをもつ正 Borel測度の集合とし、
を ![]()
のすべての集合とする。
が
以外に1つ以上の点を含むとき
はindeterminateといわれる。
(1)最近次のような結果が出された。
定理.Bakan[12]
、
を離散的な
indeterminate 測度とし、
,
とおく。このとき、
(A) 
ここで、
は多項式の
での閉包。
(B)
を
n-canonical 測度とすると
,
が存在して
,
,
をみたす。
(2)open problems
Bakan の定理 (B)の部分と 以下に述べるCassie の
Propositionとの関係を明らかにすること。
Cassier は n
canonical 測度
を次のように特徴づけした[14]
Proposition .
整数,
の点で
とし
を正数とする
を0 canonical( N-extremal)とすると
となる。
.
疑問点@: Cassierの
Propositionは定理1から出てくるか ? たとえばすべてのkで
とおけるか。
疑問点A:
は N-extremal 解の
における値である。
Cassier proposition は
m-canonocal 解が N-extremal 解より大きいことを言っている。定理 1 と矛盾しないか?
疑問点B 一番興味があるのは
がちょうど整数値になっていること。これを解明したい。
参考文献
[1]広田修著 光通信理論 森北出版株式会社
[2]自由確率論 現代数学スナップショット 作用素環のはなし<5>日合 文雄 数学セミナー99年2月号
[3]竹内外史 「線形代数と量子力学」 裳華房基礎数学選書24、p.159 ファジィ論理、量子論理
[4] ロトフィ A.ザデー 山川 烈 ファジィ集合論の原点を求めて、日本ファジィ学会誌 vol.4,No.2,229-243(1992)
[5] Halmos, Finite Dimensional Vector
Space,Princeton univ.Press,p.141
[6] Arlen Brown and P.H.Halmos, Algebraic Properties of Toeplitz operators
Journal
fur die reine und angewandte Mathematik,1963
[7]Ikaramov Classification of Normal Toeplitz matrices,1995Math.Notes(in
Russia)
[8]Ikramov and Chugunov Normality ci\ondition for a complex Toeplitz matrix
1996,Zh.Vyshist.Mat.Fiz(in Russia)
[9]D.R.Farenick,M.Krupnik , N.Kurupnik
and W.Y.Lee Normal Toeplitz Matrix,SIAM J. Matrix Anal.Appl.,17,1037-1043, 1996
[10]T.Ito Every normal Toeplitz matrix is either of type T or of type U SIAM J. Matrix
Annal.Appl.,1996,17,998-1006
[11]Akio Arimoto A simple proof of the classification of
normal Toeplitz matrices
Electron. J. Linear Algebra 9
(2002),108-111.
http://www.math.technion.ac.il/iic/ela/ela-articles/9.html#132
http://front.math.ucdavis.edu/math.LA/0204276
http://front.math.ucdavis.edu/
[12]Andrew G.Bakan Codimension of
polynomial subspace in
for discrete indeterminate measure
., Proceedings of the AMS,(2002)vol.130,no
12,3545-3553
[13] Barry Simon, The Classical Moment Problem as a
Self-Adjoint Finite Difference Operator. Advances
in Mathematics 1997, available from
http://www.math.caltech.edu/people/simon.html .
[14]Cassier Measures
Canoniques dan le Problem Classique des Momens.Ann.Inst.Fourier,